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チョコレートメーカーとして"10兆円マーケット"にアクセスする

山下 貴嗣 やました たかつぐ さん 株式会社βace 代表取締役

Part.4

 

■コンセプトとの親和性の高いイベントを利用したファン作り。

 

山下さんはこれから、何を目指していくのか。Minimalの現状の取り組みと今後の施策について、あらためて語ってもらった。

 

ファン作りのために重視しているのが、イベントです。『Farmer's Market』『世田谷パン祭り』といった、Minimalの考え方との親和性が高いイベントは、試食していただく大事な機会になります。

最近になって、イベントが僕らのコンセプトと合っているのか合っていないのかが、徐々にわかるようになってきました。確かに、例えば百貨店の催事に呼んでいただいても、売れます。でも、素材の質と味を重視する人や、ライフスタイルにこだわりのある人達が来るようなイベントで試食して下さる人達の方が、リピーターになって下さる割合が高いですね。

他にはカカオ豆から実際にチョコレートを作ってみたり、自分でオリジナルのブレンドを作ってみるワークショップも行っています。そして最近よく開催しているのが、ペアリングイベント。由緒ある酒蔵さんとコラボしてチョコレートと日本酒を組み合わせてみたり、ワインやラム酒との相性を楽しんでもらったり、といったものです」
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また販売については、ネット販売と卸売りも拡大していく。

 

「小売りの収益は、予想以上に上がっています。実はもともとは、卸売りを主体として考えていたのです。ところが、今は小売りが70~80%を占めているのが現状です。

その中で注力しなくてはならないのは、まずEコマースですね。正直、この1年は産地に行って豆を確保し、作って店で売ることで忙殺されてしまった。ですからEコマースを、もっとしっかりとしたものにせねばなりません。

そして卸売りについては、昨年の終わりからドライブをかけています。卸し先はまずコーヒー店。『丸山珈琲』『FUGLEN TOKYO』『NOZY COFFEE』といった、シングルオリジンであることや豆にこだわっていて、僕らのチョコレートとの相性がいいお店が中心です。他にはバー。ラムの専門店やシガーバー、あとはちょっと薄暗い雰囲気のオーセンティックなバーなどにも少量。また、高級食材を扱うスーパーなど流通小売り系も検討しているところです」
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■自分達だけの豆を使った自分達だけの味を、メーカーとして提供する。

 

ブランド設立当初から意識していたグローバル展開も、徐々に本格化していく。アメリカでのテスト販売が開始予定。そしてイギリスでも販売を検討する予定だ。

 

「加えて、アジア向けもやっていきます。香港、台湾向けのEコマースを検討していますし、数年先になるかもしれませんが、アジアには確実に出ていくでしょう。シンガポールか、上海か、香港か…東アジア、東南アジアのどこかですね。
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これはまだ構想に過ぎませんが、アジアの豆を使ったチョコレートをアジアで普及させてみたいと考えています。アジア全体のカカオ豆は全世界の生産量の中でも10%程度に過ぎません。しかしフィリピンやインドネシアなど、昔からカカオが育っている地域もありますし、ベトナムは国を挙げてカカオ豆の栽培を行っています。他にもインドやスリランカなどでもカカオ豆は栽培されています。

 

アジアの豆は中南米と比べてまだまだ少ない分、面白がってもらえるので、世界のマーケットでの優位性もある。ですからカカオ豆の産地にプランテーション、その近くにお店を持ち、多くの店舗も展開していけたらと。アジアは今、世界中のカカオ豆の10%程度の生産量に過ぎないのですが、産地としても、そしてマーケットとしても非常に面白いし、ポテンシャルは高い。僕らは市場を作っていかねばなりません。ビジネス効率は決してよくないのかもしれませんが、きっと面白いはず。

 

また昨年からは、農業からやろうということで、フィリピンでカカオ豆の発酵を研究し始めました。農業はすごく面白い。発酵する時に豆の内部でどんなことが起こっているのか。この温度で焼いたらどういう味が出るのか。それらの研究が進めば、レシピの再現性が生まれる。農業からやっていけば、これまで職人が勘と経験でやっていたことが、ロジックでつながっていくことにもなる
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大きな目で見たMinimalの今後のビジネスは「彼らしか手に入れられない豆を使った彼らにしか作れない味を、適切な価格でマーケットに提供していく」という方向性になるという。つまり、小売り店よりもメーカーとしての色をより濃くしていきたい、ということだ。

 

「小売りで何百億円も売り上げなくても、Minimalというブランドがエッジの立ったカッコいい存在であり続けて、しっかりしたモノ作りをしている、ということが社会的に証明されていれば、それでいい。ですから、例えばOEMをどんどん増やしていくのも面白い。例えばあるウイスキーの銘柄にぴったりと合うビーントゥバーチョコレートのレシピを、僕らが豆選びから製法までを含めて開発、販売するとか。

あとは、既存のチョコレートマーケットに出て行くのもいいですね。要は生地の生産と卸しです。バターやミルクなどの混ぜ物で味を作らなくても、これだけ風味のある生地が作れますよ、ということを知っていただき、そこから先はクライアントさんに味をアレンジしていただくとか。

 

今、チョコレートの市場は伸びています。日本だけで約5000憶円のマーケットで、それはこの5年で700億円ぐらい伸びている。今や和菓子を抜いた、といわれています。そして全世界のマーケットは、おそらく10兆円規模。僕らはビーントゥバーチョコレートのメーカーとして、この巨大なマーケットにアクセスし、新しい価値をどんどん提供していきます

目の前に大きく広がる、ビーントゥバーチョコレートの無限の可能性。だが山下さんに気負いはない。スピード感を持ちつつもしっかりと地に足を着け、一歩一歩、着実に進んでいくつもりでいる。勝負は、まだまだこれからだ。
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(終わり)


プロフィール
山下 貴嗣

山下 貴嗣 やました たかつぐ

株式会社βace 代表取締役

1984年岐阜県生まれ。慶応義塾大卒業後、リンクアンドモチベーションにて数多くのコンサルティング業務に従事。社内での新規事業立ち上げにおいて、3年間で売上15億円のビジネスを1から立ち上げる。チョコレートを豆から製造するビーントゥバーとの出合いをきっかけに独立。2014年、渋谷区にショップ兼工房「Minimal」を立ち上げる。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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