人はどんなときに回転寿司を食べたくなるのか?

米川 伸生 [記事一覧]

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回転寿司評論家。一般社団法人 日本回転寿司協会 理事。2007年「TVチャンピオン2 回転寿司通選手権」優勝。 主な著書に「回転寿司の経営学」(東洋経済新報社)「首都圏厳選 回転寿司激うまバイブル2010」(双葉社) これまで訪れた回転寿司店はのべ3000店以上。現在、日本全国の回転寿司店のコンサルタントや従業員教育、研修会等での講演の他、店舗のコンセプトワークやメニュー開発等も行っている。

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Vol.1
「あなたの知らない回転寿司48」

 

ま、別にラーメンでもカレーでも何でも良いのだけどお店の経営陣が、こういうことを考えて集客施策を練っているか否かは結構、重要ではないかと思っている。

例えば、自分の場合、「どんなときにラーメンを食べたくなるのか?」と考えてみるとちょっとお酒が残っている翌日の昼、という答えが浮かぶ。

私ならずともそういうときにラーメンが食べたくなる輩は多いことと思う。しかるにラーメン屋が「二日酔いの時に胃に優しいラーメンです」なんてコンセプトで商品を売り出しているのは聞いたことがない。ある程度のニーズがあるにも関わらず、である。

「そりゃね、そんなとこで勝負しても勝てるわけないでしょ?」と一笑に付されるかもしれないが、顧客のニーズを汲むことがマーケティングの一義と考えると「あってもいいんじゃねぇ?」と思う人も少なくないはずだ。

 

で、表題の件に戻ってみよう。

 「人はどんなときに回転寿司を食べたくなるのか?」

答え:それは人ぞれぞれである。

そうなんです、二日酔いの時にラーメンを食べたくなる人もいれば、もしかしたら二日酔いの時に寿司、それも回転寿司に行きたくなる人もいるかもしれない。よって、個々のニーズを追うよりもマスなニーズを追うほうが経営戦略的には正しいわけですね。

とはいえですね、それでは平均化されてしまい個店の差別化なんてのはできなくなってしまう。そこで、差別化戦略を取り入れるのだけれどもここでどんな差別化を目指すのかがとても重要になってくる。

回転寿司の場合、他の飲食業と大きく違うのは、味での差別化が極めて難しい!ってとこなのである。もちろん、ロボットがシャリ玉を作り、バイトがネタを載せる「100円寿司」と鮮魚を熟練の職人が握る「グルメ寿司」とでは、はっきりとした味の違いはあるのだけど「100円寿司」同士、「グルメ寿司」同士ではそれほど明確な味の差別化ができないのが現状なんですね。

特に人気の店ならば、仕入れる魚の質も職人さんの質もそれほど大きな差がない。シャリの味付けにしても誰もがわかるような差にはなっていないし。いわばラーメンのようにスープの味や麺の仕様などで差別化できる食材ではない、ってことなわけです。

 

では、何によって差別化を図っているのか?

それは「寿司」以外の部分なんですね。

がってん寿司
がってん寿司

がってん寿司」、「すし銚子丸」のグルメ寿司二大横綱は店員の活気を売りの一つにしているし、「回転寿司かいおう」はキッズコーナーや縁日コーナーなどを設けて、子供に特化している。「無添くら寿司」では本格派のラーメン、天丼、鰻丼などを提供し、サイドメニューの充実を目指している。特に近年はサービスに力を入れていない店はどんどんと沈没していっている状況で、サービス力の向上は不可欠要因。「安かろう悪かろう」と言われていた30年前にはサービスなんて概念はありませんでしたから、隔世の感が本当にあります。

サービスが良いのは当たり前!ネタの鮮度や産地にもこだわり、寿司も美味しい……世の中には「スシロー」と「かっぱ寿司」と「くら寿司」しか回転寿司店はない!と思われている方には信じられないかもしれないが、素敵な回転寿司店はいくらでもあるのである。

そこで、もう一度、「人はどんなときに回転寿司を食べたくなるのか?」について考えてみたいと思う。

高レベルでの競合店が多い「グルメ回転寿司」では、ただ他店との差別化を図っているだけでは真の勝ち組にはなれない。「人を食べたい気にさせる回転寿司店」を目指してこそ、王者への道が開けるのである。つまり、ないところに需要を生む、という発想ですね。

そんな需要を生んでいる店が今回紹介する「回し寿司 活 西武渋谷店」である。

 

ここ、東京で一番行列が出来る回転寿司店として有名な店で、かの「美登利寿司」の直営店と聞けば、「なるほど、安くて美味なのね」とおわかりいただけるだろう。しかし、今回のポイントはソコではない。

「この店でどうしても酒飲みたいんだもんね」という需要を生んでいるところがなんといっても凄い!

どれくらい凄いかというとチラと見せますが、このくらい凄いんです。

回し寿司 活① 刺し盛り

回し寿司 活②

 

回し寿司 活③

 

「回転寿司店で宴会をしたい!」などとことを考える方などそもそもいないことと思うが、この店の場合、「ここで宴会をしたい!」「宴会と言えば『活』だろう」といったこれまでにまったくなかった需要を生むことになる。

ちなみに私の場合、一人酒と言ったらまず浮かぶのがこの店です。一人で飲んでても楽しく幸せな気分になれるんですね。「二日酔いの時にラーメンが無性に食べたくなる」という需要同様、「酒が飲みたくなった、宴会がしたくなったら回転寿司!」という需要も世の中にはあるのだ。

そういった需要を生む店が私は好きだ!

 

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