楽天IDの強みとは?担当者が語る戦略と今後のマーケティング戦略
国内のマーケティングのトレンドは、オンラインとオフラインをうまく融合させることにある。こうした中、ECからフィンテックまでさまざまなサービスを展開している楽天グループは、楽天IDに基づくデータを分析し、ユーザーに適した広告を配信するマーケティングソリューションを提供している。その中でも、楽天IDと購買データを活用してクーポンなどを提供する「RMP - Omni Commerce」は、オンラインとオフラインを効果的につなぐことで成果を出している。楽天担当者のインタビューのもと、販促・マーケティングトレンドや本ソリューションの特徴を紹介する。
■「RMP - Omni Commerce」の強みは1億以上の会員と膨大なデータ
今回、紹介するのは「RMP - Omni Commerce」というマーケティングソリューション。楽天会員になると取得できる「楽天ID」と、オンライン・オフラインの「購買データ」を活用することで、ユーザーを軸に、販促・育成・有望層への宣伝を一気通貫で行える。
近年、新型コロナウイルス感染症の感染拡大以来、消費者の購買活動がオンラインにシフトしていることから、デジタルを利活用した販促活動が拡大している。実施スピードが速く、ターゲティングもしっかり行う施策がトレンドだ。
そうした中、「RMP - Omni Commerce」は次のような強みを発揮すると、楽天グループ株式会社 アド&マーケティングカンパニー データ&DXソリューション部 ヴァイスジェネラルマネージャー山口高志氏は語る。
「RMP - Omni Commerceの強みは、1億以上(2022年6月時点)の楽天会員からなる顧客基盤と、70以上のサービスを活用したオンライン・オフライン双方におけるデータの蓄積です。楽天IDに基づく購買実績によって、ユーザー像を可視化し、顧客理解が進めることができます。これにより必要なユーザーに必要な広告を表示することができ、高い費用対効果を提供できます。また『楽天ポイント』が活用できるのも強みです」
■オンラインとオフラインの連携で販促効果を高める
RMP - Omni Commerceは「オンラインとオフラインの連携」にも特徴があるという。
本来はオンラインメインで行っていたブランドの訴求が、楽天IDに基づくことでオフラインでも可能になるというものだ。
これにより、販促をより早く、安価に実施することが可能になるそうだ。
山口氏はオンラインとオフラインをつなげる例について、次の2つを挙げる。
●デジタル接触とオフライン購買をつなげる
「例えば、オンラインでデジタルチラシを見た人に対して、商品を購入するとポイントがもらえることで、実質割引サービスのような形となる『ポイントバッククーポン』を事前に獲得してもらい、店舗などでのオフライン購買を促します」
●オフライン購買とオンライン購買をつなげる
「例えば、ECでビールを購入する習慣がある方に、オフラインでお試し購買を促進します。施策の結果については楽天IDに基づいて反応評価をしたり、ユーザー像の可視化を行ったり、楽天インサイト株式会社を通じたアンケートなどによる深堀調査を行ったりすることなども可能です」
■パラダイムシフトに最適化された今後の展開
現在、販促業界では大きなパラダイムシフトが発生し始めており、今後もその動きは加速化していくことが予想されるという。そこで、「RMP - Omni Commerce」としても新たな展開を予定しているそうだ。
●パラダイムシフト
1.実店舗購買でも「マス施策」から「ターゲィング施策」へ
テレビCMや街頭広告、新聞雑誌広告などのマスメディアによる宣伝・店頭を起点とした全員対象となる販促から、ターゲットを絞ってピンポイントで施策を打つ宣伝・販促へとシフト。
2.「花火型販促」から「Always On型販促」へ
一発打ち上げて一時的に大きな効果を得る花火型の販促から、常時、もしくは継続的に販促を実施する形へシフト。
3.「ブランド単体」から「クロスブランド・クロスジャンル」へ
一つのブランドによる施策ではなく、複数のブランドや複数ジャンルによる施策へとシフト。
「1と2によってオフライン販促の規模を拡大しつつ、3でマーケティングパートナーとしての基盤を提供します」
具体的にはどのように展開されるのだろうか。
「毎日の街でのお買い物で楽天ポイントを獲得できるサービス『Rakuten Pasha』において、対象商品のクーポンである『トクダネ』をより使いやすくすることで、ユーザー体験を進化させていきます。例えば、 現在は株式会社西友や株式会社東急ストア、株式会社ポプラが展開する店舗で新しい施策が進展中です。
また楽天IDと購買データを掛け合わせることで宣伝・販促効果を可視化し、PDCA(Plan、Do、Check、Act)が回せるようにします。
メーカーが単独で購買データ・プロファイリング基盤を保持するのは短期では困難なケースも多いため、弊社のCDP(Customer Data Platform)を間借りするようなイメージ(賃貸型CDP)で、迅速なPDCAを回せるようサポートします」
山口氏は、今後の展望について、次のように語る。
「今後は、ECで当たり前のことをオフラインで当たり前にし、オンオフの垣根をなくしたマーケティング環境をつくっていきます」
楽天IDや楽天ポイントが大きな強みでありながら、オンラインとオフラインをうまく連携させて、より効果的な販促・マーケティングが行えるのは注目といえる。
また今後は、施策実施後に集まったデータをもとに販促効果をいかに計測するかというところがポイントになっていきそうだ。
【取材協力】
山口高志さん
楽天グループ株式会社 アド&マーケティングカンパニー データ&DXソリューション部 ヴァイスジェネラルマネージャー
アクセンチュアにて、官公庁・公益事業領域におけるコンサルティングに7年間従事。2016年3月楽天に入社し、楽天市場での新規事業を推進。2018年3月、楽天内の新規事業創出プログラム「R-Pitch」にて、オフライン事業を提案。2019年2月4日、正式にユーザー向けサービス「Rakuten Pasha」を開始するとともに、オフライン購買データに基づくIDマーケティングソリューション「RMP - Omni Commerce」を主導。月間1,000万枚以上のレシートデータを、プロファイリング項目豊富な楽天IDに基づき、販促のみならず顧客理解やマーケティング領域でのデリバリーも主導。