資生堂、ツムラ、カゴメのウェルネスカテゴリーの協業が話題。 企業コラボによる新価値創造

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かつてのような“競争一辺倒”、“同業の競合視“といったスタンスは、少なくともマーケティング分野においては完全に過去の話だと言えるだろう。自社、自ブランドのアセットだけでは満たしきれない技術力やブランド力を、むしろ他社の”ナナメむこう“のブランドとジョイントすることで相互補完し、連合軍によって価値を創造するムーブメントがますます盛り上がってきている。

独占的な利益確保よりも、消費者へのより高い価値提供に舵を切る企業姿勢が市場に歓迎されるのは、当然といえば当然のこと。今回は、注目の企業コラボレーション事例をいくつかピックアップしたい。

化粧品の国内最大手である資生堂は、今年1月、経口摂取により美容と健康を提供するウェルネスブランドを一新、大々的な発表会を開催した。「美しい、は生きている」をブランドフィロソフィーに掲げ、「はだ、からだ、こころ」の繋がりを解明し、一人ひとりの美の生涯持続性を引き上げることを目指していく、と発表。俳優の清野菜名さんと市川実日子さんがミューズとして出演し、シンガーソングライターのあいみょんさん初となるCM書き下ろし楽曲を提供した新CMも大きな話題を呼んでいる。

今回新たにデビューする2ブランドは、実はツムラとカゴメという大手2社とのコラボレーションによって誕生した。

資生堂によると、「一人ひとりの、生きるに、活きる。」をパーパスに、「”Cho-Wa”(調和)」の取れた未来を実現する企業へ」を長期経営ビジョンのテーマに掲げ、生薬と心身のつながりに圧倒的な強みをもつツムラと、トマトをはじめとする野菜・果実のおいしさや健康価値を活かした飲料・食品等の研究開発を強みとするカゴメと、「よりよい社会を実現していきたい」という共通の思いを軸に、今回の共同研究・商品開発に至ったということ。漢方薬大手のツムラとは「東洋思想の五臓(肝・心・脾・肺・腎のこと)」、野菜のプロフェッショナルであるカゴメ社とは「野菜の力」から着想を得た商品やサービスの開発を進めてきた結果、今回の商品が誕生したようだ。

 

ツムラとの開発で生まれた「チューンボーテ」は、東洋「五臓」の考え方と、先端美容科学を融合したサプリメントシリーズ。「整える」「巡る」「つくる」「守る」「保つ」という体内の5つの働きが美と健康の土台であること、そしてその土台の状態が一人ひとり異なることに着目し、コンディションに合わせてチョイスするスタイル。身体の中の声を聞いてアプローチする「美を育む、五臓式習慣」に基づいている。

「TUNE BEAUTE(チューンボーテ)」の名称は、「小さな歪みさえも微調整して、美しさの土台をつくりあげる調律師」をイメージし、「BEAUTE(美しさ)をTUNE(調律する)」を意味する。

朝・夜で飲み分けるスタイルが斬新な「ROOTINA(ルーティナ)」は、身体が本来持つ「体内時計」と美しさの関係に着目し、朝・夜の飲用習慣で美のリズムサイクルを創り出すというコンセプト。「ROOTINA(ルーティナ)」の名称は、「美しさの根本 (ROOT)を身体の中に取り入れる (IN)」、新しい美容習慣・ルーティンを表す。

このドリンクは、資生堂の先進美容研究とカゴメの野菜・果実の知見を美容科学で紐解く「野菜美容学」から誕生。カゴメ側は、資生堂とのオープンイノベーションにより、資生堂のブランド力、マーケティング力、販売力などのリソースを通じて単独ではアプローチし難い美容感度の高いユーザーに野菜の健康美への価値を伝えると表明している。

 

「健康に良い」と「美味しい、大好き!」の掛け合わせで互いのターゲットを獲得。国民的アイス「クーリッシュ」と健康食品の「からだにユーグレナ」がコラボ。

 

 

株式会社ユーグレナが展開するスーパーフード「石垣島ユーグレナ」を毎日手軽に摂取できる飲料・サプリメントシリーズ「からだにユーグレナ」。中でも「からだにユーグレナ フルーツグリーンオレ」は、自然な甘さのフルーツオレ味で、同シリーズの中でも人気だという。ユーグレナにはパラミロンという独自の食物繊維が含まれることからヘルスコンシャスなターゲットに人気を博しているが、フルーツ牛乳のような甘みのある“味”が好きでリピートしている人も多いそう。また、地道に各所のサウナでの販売拡大を実施してきた効果で、サウナ後のドリンクという認知も得られているようだ。

対し、2023年に20周年を迎えるロッテの「クーリッシュ」は、新たな挑戦として「その一口が、一日を変える」をテーマに、ヘルシーな「からだにユーグレナ」とコラボし、「アイスの領域を飛び出す」ことを目指すと表明。

根強いファンを持つ“チョー気持ちいい”「飲むアイス」とスーパーフードである「石垣島ユーグレナ」の融合による、「おいしさを超えた、新たな価値提案」をアピールし、2社が実施したMakuakeでのクラウドファンディングでも、見事目標金額を達成し商品化するという。

 

TikTokが主戦場の今、ブランドコラボのハードルを下げてライトに取り組む秘策とは?

 

大企業同士のブランドコラボレーションは、いわば一つの事業提携であり、なかなかおいそれとできるものではない…そう思うマーケターもいるかもしれない。しかし、ライトに企業コラボを実現する手立てもある。

デリバリーピザ大手のピザハットは、2023年春からのTikTokアカウントの運用体制強化に伴い、TikTok運用に強みを持つLeading communication社による様々な施策運用により、取り組み開始から9ヶ月でフォロワー数220%成長、5万4000名超のフォロワーを獲得に成功するという快挙を成し遂げた。

TikTokユーザーたちの声を反映したピザメニュー開発など様々な施策の中で大きなバズを呼んだひとつが、他の食品・飲食関連各社からの商品提供による、意外性溢れるピザメニューの投稿だ。

 

ハナマルキ、ゴーゴーカレー、たいめいけんといった各社に公式に材料を提供してもらい、実際にオリジナルのピザを作ってみる動画でバズを喚起し、若年層にも受け入れられる柔軟でクリエイティブなピザブランドとしての認知とエンゲージメント獲得に成功している。

Leading communication社によると、企業やブランドと“構えて”コラボレートするのではなく、食材という、ブランドの持つ実は本質的な“コンテンツ”を提供してもらうことで、決裁ハードルを下げ、スピーディに相互の若年層へのリーチ獲得というメリットをシェアしあえる座組みを達成できたという。

ブランドジョイントのコラボレーションは、“共栄”、“万人モテ”を重視するZ世代のコンシューマーのエンゲージメントを獲得できる一つの有効な戦い方といって間違いなさそうだ。

 

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