オールマイティでINCLUSIVEなメディア運営支援企業が今、 米国で話題のニュースレター事業を推進するワケ
2021年のデジタルコンテンツ市場の大トレンド、「ニュースレター」事業とは?
「ニュースレター」とは、個人クリエイターがテキストや画像などをあしらった読みごたえのあるコンテンツを配信できるデジタルコンテンツの配信形態を指し、2021年に日本においても盛り上がりを見せると期待されているコンテンツカテゴリーの1つだ。
書籍や新聞を課金して購入するという行為の形態が変わったもので、読者がエージェントを通さず、制作者に直接、コンテンツの対価を支払える点が、 従来型の読み物メディアとの大きな差異の1つになる。旧来型のコンテンツとしては本質的には“有料メルマガ”のモデルが近いが、必ずしもEメールをビークルとするのではなく、SNSと連携させるなどデリバリー経路や発信する側・受信する側双方のUIが進化したものと考えるとイメージしやすいかもしれない。
米国Twitter社がオランダの“ニュースレター”配信サービス「Revue」を買収し、米国では既にTwitterからクリエイターが配信するニュースレター購読ができる遷移が実装されている。
各ユーザーはニュースレターコンテンツの配信機能を無料で使用できるが、有料で購読させる場合は手数料をTwitter社に支払うことになる。
大手エージェンシーなどがマネージメントするクリエイターの寡占状態から、読者がSNSなどを通して関心を持ったクリエイターに対して直接コンテンツ対価を支払う仕組みが一般化することで、クリエイターがよりサステナブルに発信を継続できる環境を作る、クリエイターエコノミーの健全化にも一役買う事業モデルとして注目が集まっている。
Twitterメニューから既にRevueは使用可能。(まだ日本円での決済は未対応の模様)
堀江貴文氏なども発信クリエイターとして参画する「ニュースレター」が始まる
このニュースレター事業に、事業家の堀江貴文氏などを筆頭に人気のオーサーらを迎えて乗り出すのが、レガシーメディアのDXを手掛けるINCLUSIVE株式会社だ。
2021年初頭に、実業家 堀江貴文氏のメールマガジン配信会社、SNSメールマガジン株式会社を買収。インターネット上における個人の情報発信、個人課金ビジネスの垂直立上げ、クリエイター個人のDX強化・マネタイズ支援事業へ乗り出すことを表明し、株価もストップ高を記録した。
また、ニュースレター事業を推進する担当者を採用すべく、副業も可として広くClubhouseで公募面接を実施。そこには堀江貴文氏やIT批評家の尾原和啓氏も面談役として参画し、550人以上の聴衆を集めた。
すでにIT業界で活躍している重鎮から若手までがニュースレター事業展望に関してディスカッションする、実に個性的な採用機会は大きな話題になった。
堀江貴文氏もニュースレター発信クリエイターとして参画が決定
今一度、INCLUSIVE社の事業展開と、なぜ、いま、ニュースレター事業へ乗り出すのかを同社取締役COO 後藤健太郎氏に取材した。
INCLUSIVE株式会社 取締役COO 後藤健太郎さん
2005年 ニューヨーク大学大学院政治学部卒業。
メリルリンチ日本証券 投資銀行部門ならびにヒューロンコンサルティンググループにて資金調達、M&Aをはじめとしたアドバイザリーサービスを提供。
株式会社じげんにてグローバルプロジェクト責任者として事業企画を、経営企画部長としてIPO、子会社経営に取り組む。
INCLUSIVEでは財務・事業企画、新規サービス企画に従事。IPOプロジェクトを主導した後、現在は事業部門の統括責任者として、多岐にわたるビジネスモデル構築とインターネットサービス企画を幅広く手掛ける。
レガシーメディアのDXの第一人者
広告代理店での営業から始まり、パソコン、ケータイの黎明期から堀江貴文氏率いるライブドアでのポータル事業のクライアントマーケティング統括など、インターネット事業会社でキャリアを重ねて独立した藤田誠氏が2007年に創業したINCLUSIVE株式会社。
コンテンツ事業者とともにメディア事業を立ち上げ、ページビューを獲得できるコンテンツ作りから広告事業のマネタイズまでトータルで支援できることが強みだ。
かつて、レガシーメディア関係者の中では“本誌”の“サブ”とも捉えられがちであったデジタルメディアが、メディアビジネスの主戦場になって久しい。いまだレガシーメディア企業においては、コンテンツのDXに苦戦しているケースは多い。
たとえば、雑誌メディアの内容をそのままウェブコンテンツにするのは長すぎてしまい、かつ、誌面で映える美麗な写真をスタイリッシュにレイアウトした画像はウェブやスマホ画面では見辛く、むしろUX的にネガティブに働く事もある。テレビ局のコンテンツも、そのまま活用するのではなく、価値あるアーカイブ情報をどうウェブメディアでみせていくかのアジャストが必要になる。
紙媒体のアナログな流通販路や電波に頼らずにいかに読者にリーチするかのお作法も、デジタルメディア業界でゴリゴリにPDCAを回してみてこそ会得できるものであり、デジタルメディアでの広告手法も、紙媒体のそれとは全く異なる。
これらレガシーメディアのDXに欠かせないトータルのノウハウを蓄え、DXトレンドの黎明期から現在に至るまで、数十サイトにも及ぶ雑誌ブランドのDXやデジタル限定メディアブランド立ち上げを成功させてきた、まさに“レガシーメディアDX”の立役者が、INCLUSIVEなのだ。
錚々たる名門メディアのDXを支援。
蓄積されたスキームを活かして今後は地域情報発信にも注力
創業以来、小学館、集英社、扶桑社、光文社、主婦の友社、講談社、扶桑社、徳間書店、CCCメディアハウスなど、名だたるコンテンツホルダーのメディア立ち上げやDX支援を行ってきた。
現在の支援先には「anan web」、「Newsweek日本語版」など人気雑誌のデジタルメディアや、関西テレビと連携した「anna(アンナ)」、福岡放送と連携した「ARNE(アーネ)」も名を連ね、近年は吉本興業が若手も含む芸人たちのニュースやコンテンツを発信するオウンドメディア「ラフ&ピースマガジン」や、大阪エリア情報を発信する「枚方つーしん」「寝屋川つーしん」、サッポロビールなど北海道を拠点とする企業と連携した企画実績もある「北海道Likers」など、地域情報発信メディアへの支援にも積極的に乗り出している。
この「北海道Likers」は、カヤックが運営する移住マッチングサービス『SMOUT(スマウト)』ともコラボレーションし、北海道移住の魅力を発信することも先日リリース(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000038.000017155.html)された。
サステナブルなメディア運営ノウハウを簡易的に導入できるCMSも販売
「日本各地に地域情報メディアはありますが、ページビューがきちんと収益に反映されるメディアが少ないのが実情です。また、ライターもボランティアの方に頼らざるを得ないなど、収益構造が破綻したままで運営自体がサステナブルでないことが多いです。
収益化ができるフォーマットをある程度整えることで、ライターを使ってより求められるコンテンツが作れるようになります。
そのために、ネットワーク広告の実装だったり、ページビューを獲得するためのコンテンツ流通経路の確保だったりと、ある程度サイトを成長させ、収益を確保できるノウハウも持っているわけで、それを再現性高く支援できる、弊社の強みを簡易的に導入できるCMSプロダクトも2021年4月にローンチ(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000036.000017155.html)しました。
このCMSは月額10万円強~、というミニマムなコストで導入できるので、初期投資が限られるローカルメディア運営を強力に支援できると思っていますし、それに限らず、収益化が進まなかったメディアをサステナブルな事業へとシフトできる切り札になると思います」(後藤さん)
個人がメディアとなる時代。個人のDX支援こそが、「ニュースレター」事業
『ニュースレター』とは、いわば書籍や新聞を課金して購入するという購買行動をDXしたもの。旧来式のデジタルコンテンツ様式でいうと「メルマガ」に近いが、近年メールに代わって頻用されるSNSなどと接続され、ユーザーがSNSを通して知ったコンテンツ制作者のオリジナルコンテンツにアクセスし、有料で購入できる仕組みが想定される。
INCLUSIVEは7月1日に、このニュースレター事業を新規で立ち上げるという。
サービス名は「WISS」(ウィズ)。「Wisdom」、所有を意味する「S」、「with」のワードの融合で、有識者が持っている知恵を発信する、発信者と読者が一緒に作る場所、という意味合いが込められている。
開始時は各界を代表する有識者による読み物コンテンツとなる。読者が“有料でも読みたい”と感じる一流の実業家・評論家・投資家・学者・文化人・ジャーナリストのコンテンツが配信されていく予定だ。
なぜ、いま?
「5年前でも、5年後でもないので今、というか。
デジタルコンテンツ市場においては、コンテンツは無料で読めるのが当たり前という時代が長く続いたわけですが、その一方で情報量が圧倒的に増加し、自分が知りたい情報を探すコストも上がってきています。その結果、『価値のあるコンテンツは対価を払ってでも読みたい』というニーズも盛り上がってきています。日本でもコンテンツ課金サービスが一般化していることからもわかるように、ユーザーの行動変容がニュースレター事業にとって追い風になると考えます」(後藤さん)
他社の課金型コンテンツ配信事業との違いは?
「現状、個人がコンテンツを配信できて、課金についても発信者が設定できるサービスが出てきていますが、個々人が自由にコンテンツ流通の“場”を提供しているという側面が大きいと思います。
対し、弊社の立ち上げるニュースレター事業では、クリエイター個人のDXという側面は他サービスと同じですが、より発信者に寄り添った立ち位置、というか、発信者がどうバリューを出していくかを一緒にプロデュースしていこうとしています。そこまでして、クリエイターがサステナブルに価値を発揮するためのDX支援ととらえるので」(後藤さん)
個人クリエイターというコンテンツのDX、それをサステナブルなものに整えることが、INCLUSIVEが展開しようとしているニュースレター事業なのだ。
初めから有料課金が前提?
「ローンチ時から参画することが決定している発信者は、有料でも読みたいと思われるような有識者ばかりです。すでにファンの多い方がほとんどですが、発信者同士のコラボコンテンツ企画などを通して、購読者・発信者の双方が知的好奇心を満たし、さらに魅力的なコンテンツクリエイションがなされる場にしていきたいと考えています」(後藤さん)
発信者が他では発信しないような本音・裏話を知ることができる場となるようだ。たしかにファンや質の高い情報を求めている購読者にとっては、価値の高い情報を得られる場として魅力的だろう。
発信者(クリエイター)はどんなカテゴリーのどんなメンバーに?
コンテンツの発信者として、複数の著名人の参画がすでに決定している。
「カテゴリーは複数に渡ります。実業家の堀江貴文氏をはじめ、行政改革や企業の経営改革の専門家である上山信一教授や、IT批評家の尾原和啓氏、脳科学者の茂木健一郎氏、マンガ・小説編集者の佐渡島庸平氏、また、アメリカの著名なジャーナリストであるMark Halperin氏など、様々な分野の方にご参画いただきます。
今世間で話題のトピックや出来事について、あの人はどういう風に捉えて、どういう意見を発信していくのだろうというところに読者が関心を抱くような方で固めていきたいと思います。発信者自身独自の視点から、読者の関心事について、ニュースレターとして発信していくイメージです」(後藤さん)
どんなところが “ならでは”ポイントになりそう?
「発信の場の居心地の良さを担保する一方で、読者にとっての発信者、媒体自体のとっつきやすさ、フレンドリーさにもこだわりたいと思っています」(後藤さん)
ニュースレター発信のためのビークルは何を想定している?
「たとえばこれからコンテンツ消費の主役になっていくと想定される今の20代の人に、普段プライベートで使っていないメールを使ってもらうのって大変ですよね(笑)。
好きなクリエイターのコンテンツ見たさに何かのビークルを改めて使ってもらうのはハードルが高いと思うので、そうではない、普段使っているLINEと連携して、ユーザー登録や決済ができるようにする予定です」(後藤さん)
オンラインサロンのような立体的なコンテンツも仕掛けていく予定が?
「オンラインサロンになると、クリエイターが主役である点ではニュースレターと同様ですが、ユーザー側もコンテンツやオピニオンを提供しないと成立しがたいので、ニュースレター事業のスキームとは必ずしも一緒ではないと思う。しかし、サロンはニュースレターよりもロイヤリティが高いユーザーとは親和性が高いので、連動していく可能性がないわけではないと思っています」(後藤さん)
レガシーメディアのDX、地域メディアの収益化など、どちらかというと「toB」領域で他の追随を許さない競争力を維持してきたINCLUSIVEの、「toC」の新トレンド領域を攻めるチャレンジ。
2021年7月1日にローンチ、その前の6月24日にはプレローンチとして堀江貴文氏のニュースレターを先行配信する予定ということ。
どんなデビューになるのかが楽しみだ。
※INCLUSIVE株式会社 ニュースレター事業「WISS」 リリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000041.000017155.html