ものづくりの明日はどっちだ!?
ワクワクしながらプレゼントのリボンをほどいた子供が、「ほしかったのはコレじゃない!」と絶叫するーー人生の真理が詰まった異色玩具「コレジャナイロボ」、少年の心を思い出させる「自爆ボタン」「最高機密封筒」、ネタにせずにはいられない「土下座ストラップ」etc.
武笠氏と坂本氏が共同代表を務めるザリガニワークスは、クスリと笑えてネタにもできる、そんなユニークな玩具の企画開発・デザインを中心に幅広いコンテンツを制作している。
センスが生きるおもちゃの独自開発だけではない。ポール・スミスやペンタックス、ブシロードクリエイティブ、はたまた子ども服メーカーのティンカーベルなどとも精力的にコラボを展開してきた。
創意を込めたフルスクラッチと、密にコミュニケーションを取って進めるコラボ案件で存在感を発揮し続けるザリガニワークス。彼らのクリエイティブの明日はどっちだ!?
食器でもおもちゃでも、コンセプトは揺らがない
2001年の「コレジャナイロボ」リリース以来、ザリガニワークスは幾多のプロダクトを世に送り出してきた。ユニークすぎるおもちゃが目を引くが、中には意外なコラボ商品もある。
それは、2017年にリリースされた「BEER MUG FOR KIDS」。耐久性と安全性に秀でた新素材を採用したキッズ専用のコップである。プラスチックの成形のOEM生産に強みを持つサカエ工業と共同開発し、好評を持ってユーザーに迎えられた。安心・安全を追求したマグながら、コンセプトは「子どもたちのための“ビア”マグ」。実用性を重んじつつ、それでいてザリガニワークスらしい遊び心が存分に発揮されたプロダクトだ。
「サカエ工業さんの主力商品は冷蔵庫の棚などの透明プラスチック製品。40年以上に渡って成形一筋に技術を磨いてきたメーカーです。ただ、OEMがほとんどで自社製品がほとんどなく、新商品を開発したいということで僕たちにお声がけをいただいたんです。僕たちが商品のコンセプトをしっかり作り、サカエ工業さんには技術面をしっかり踏まえて生産していただく。いい分担でじっくりと共同プロジェクトを進められました」(武笠氏)
「プラスティック成形で何ができるのか? 思いっきり自由に発想してほしい。そんな期待を感じていました。僕らは“遊び”をよく作るメーカーなので、面白かったら不便でもいい、という側面も開発においてはあります。だけど今回は子どもに向けて快適な使用感を届けなければならない。普段は使わないアタマをひねりましたね(笑)」(坂本氏)
実用重視の食器と、面白さがフックになるおもちゃ。普段は使わないアタマで企画・デザインを進めたが、モノづくりに臨む姿勢としては何ら変わることがなかったという。それは、ふたりが大事にする「コミュニケーション」がコンセプトの根幹にあったからだ。
「僕のコップ、私のコップ……ということで、子どもながらパーソナルなモノとして使ってもらいたかった。反響を見ていると、そこにはハマったかなと思いますね」(坂本氏)
「食卓でもパーティーでも、そして歯磨き用コップでもいい。この商品の目的、本質はコミュニケーションにあるんです。食器作りでもおもちゃ作りでも、ユーザーの共感を呼びたいというザリガニワークスのコンセプトに変わりはありません」(武笠氏)
これまでのプロダクト(コラボ)
- K-xコレジャナイロボモデル(PENTAX)
- JUSTICE LEAGE×コレジャナイ(ワーナー・ブラザース)
- コレジャナイ寿司( ブシロードクリエイティブ)
- コレジャナイ・マジンガーZ(ダイナミックプロ)
- キン肉マン×土下座ストラップ(キタンクラブ)
無限の可能性を秘める「コレジャナイ●●」
「BEER MUG FOR KIDSはサカエ工業さんの技術を世の中にどう紹介していくかというのが本筋で、僕たちが今まで培ってきたコミュニケーション、遊びといった要素が役立てられたと考えています」(武笠氏)
ザリガニワークスには、『コレジャナイロボ』『無気力フレンズ』『土下座シリーズ』など、多彩なIPが揃っている。ザリガニワークスとパートナーシップを考えるなら、ゼロからのフルスクラッチはもちろん、既存IPとのコラボによるプロジェクトも視野に入るだろう。
「コラボ案件をプロダクト化する上で、IPを活かすものとフルスクラッチの二択で考えているわけではありません。大事なのは、やりたいことに無理なく結びつけられ、ユーザーに届けられるかということ。IPとの連携を要望されても、もしかしたらゼロから作ったほうがふさわしいかもしれない。もちろん、その逆もあるでしょう。パートナー、ユーザー、そして僕たち、みんなが笑顔になれる形を考えていければ」(坂本氏)
「坂本の言う通り、その時のオファーに対し、ベストな企画をご提案したい、という一点のみです。そこに僕たちのIPが生かせるのなら、存分に使ってほしい。
例えばそうですね……ブシロードクリエイティブさんに提案した『コレジャナイ寿司』が分かりやすいでしょうか。『コレジャナイ』という寿司をカプセルトイにしたもので、日本文化はコレジャナイ! というシリーズになりました」(武笠氏)
『コレジャナイロボ』だけじゃない。ザリガニワークスは「コレジャナイ」で商標を取得しており、ありとあらゆる形で「コレジャナイ●●」をプロダクト化できるポテンシャルがある。「自治体などともコラボできれば」とふたりが語る通り、業種業界を問わず、ザリガニワークスのIPと掛け算した新規プロダクトがヒットする可能性を秘めている。
既に知名度、バリューを獲得しているIPですら、ゼロベースで企画・デザイン化できる。それもザリガニワークスのストロングポイントなのだ。
これまでのプロダクト(自社開発)
- コレジャナイロボ
- 巻物レター
- 最高機密封筒シリーズ
- 野望ポスター
- 自爆ボタン
川上から川下までワンストップで一緒に考えていける
「面白いことを考えるだけではなく、僕らと一緒に仕事をする人がどうしたら喜んでくれるかというアイデアを出すのも得意!」と、自らのモノづくりを分析するザリガニワークスのふたり。
コラボ先、企画提案先とのプロジェクトにおいて何をもたらすことができるのか、還元できるのかを常に考え続ける。それがザリガニワークスのモノづくりイズム。衆目を引く企画やデザインの妙だけではない。メディアを巻き込んだ仕掛け、プロモーションのアイデアにも「らしさ」が発揮される。サカエ工業とのコラボでも企画・デザインにとどまらず、プロモーション、流通のアドバイスまでワンストップで担当した。
「僕らはプロダクトデザインだけではなく、映像の制作も行っています。その強みを生かし、サカエ工業さんとのプロジェクトではプロモーションビデオまで作りました。
また、プロトタイプの段階でアシストオンさん(雑貨のセレクトショップ)に持ち込み、流通サイドからのアドバイスも収集。それは商品の豊富なカラーバリエーションという形で反映されています」(武笠氏)
「デザインからプロモーションまで、つまり企画の川上から川下までワンストップで一緒に考えていける。それがウチらしさじゃないでしょうか。やんちゃなことを求められていても、クラフトマンシップを求められていても、コミュニケーションを密に取って進められるのが強みだと思います」(坂本氏)
プロダクトを超えたメディアミックス展開の好例が「石膏ボーイズ」。ホルベイン画材からの依頼で、4体のイケメン石膏像をバーチャルアイドルとしてパッケージした。当初はグッズのみでの展開を模索していたが、KADOKAWAが座組に加わったことでアニメ化も実現。画材業界、おもちゃ業界を越えて大きな注目を集めている。
「KADOKAWAさんにサポートいただけることをまとめ、プロジェクトを大きくできました。こんなパートナーでが出てきたら、より大きくし、推進できる。それも僕たちが得意とすることです」(坂本氏)
「良いプロダクトを作ったからと言って、売るのが簡単になるわけではありません。ユーザーに共感していただけるストーリーをパートナーと一緒に考えていきたい。その思いは設立から今までまったく変わっていません」(武笠氏)
モノ消費からコト消費へ。消費者の指向も着実に変わりつつある中、「ユーザーの共感」を根本に据えるザリガニワークス。遊び心を持って軽妙に。しかし、思想は骨太に。ふたりの視線は、常に新たなプロダクトに向いている。
ザリガニワークスができること → 業種を問わない企画立案
- キャラクターデザイン(湖池屋スコーン公式キャラクター「カリサクくんと濃厚人面犬」)
- 動画作成(BEER MUG FOR KIDS PV制作、弾神オドロッカー番組企画制作)
- 作詞作曲(弾神オドロッカーシリーズ作詞、「IT IS NOT THIS!コレジャナイロボ」作詞作曲)
- 商品開発(土下座ストラップ、石膏ボーイズ、BEER MUG FOR KIDS、自爆ボタンUSBハブ、カプセルアドベンチャー)
- セールスプロモーション企画制作(日清食品×おバカ創作研究所、チェリオSP企画)
(有)ザリガニワークス
http://www.zariganiworks.co.jp/
武笠太郎、坂本嘉種によるマルチクリエイティブ会社。「コレジャナイロボ」や「自爆ボタン」「土下座ストラップ」など、玩具の企画開発、デザインを軸にしながら、「ごはんかいじゅうパップ」「弾神オドロッカー」「石膏ボーイズ」など、キャラクターデザイン、作詞作曲、ストーリー執筆等、ジャンルにとらわれないコンテンツ制作を広くやっております。コレジャナイロボは2008年度グッドデザイン賞受賞。新規商品企画、番組、PR映像制作、SP企画などもやっております。