クチコミの変化
三木 佑太 [記事一覧]
株式会社サイバー・バズ広告メディア事業部 執行役員。 1987年、大阪府出身。2010年サイバーエージェント入社後、 サイバー・バズへ出向。2014年局長に就任し、サイバー・バズで 受注した案件のプランニングの約8割以上を手がけている。2016年広告メディア事業部 執行役員に就任。LINEやAntennaとの 定期的な合同セミナーや総合広告代理店と共同で大型案件にも携わる。共著「クチコミデザイン」を2014年に出版。
クチコミの変化
こんにちは。三木です。
以前こちらでコラムを連載させていただいておりましたが、今回また新たに機会をいただきましたので、宜しく願い致します。
※前回のコラムhttps://nipponmkt.net/category/column/yuta_miki/
今回も「クチコミ」という軸でお話させていただきます。
前回のコラムは2015年に連載をしました。その頃からは「メディア」「人」「社会」において大きな変化が見られます。まず「メディア」においては、写真・動画に特化したSNS「Instagram」の流行、そして、新たな動きとしては投稿したコンテンツが一定時間で消える「Snapchat」「SNOW」といったサービスが若年層の間で人気を集めています。さらにその一般人の投稿をまとめるキュレーションメディアの台頭も大きな変化かと思います。その結果、「人」も大きく変化しています。例えば、タレントと同等の人気を集める一般人「インフルエンサー」が多く登場しています。さらに、インフルエンサーはサービスごとに存在しており、Instagramの人気利用者はインスタグラマーと呼ばれます。こうしたインフルエンサーはフォロワーにとっては有名タレント以上の影響を与えるケースも少なくありません。
さらに人とメディアが変わったことで、クチコミが「社会」にも大きな影響をあたえる時代になってきています。SNSでの発信をきっかけにニュースが報道されることも多く、大統領選挙にSNSが大きな役割を果たしていることも社会の変化と言えるかと思います。これも大きな変化の1つです。それほどクチコミの力は強力になってきています。
まず第一回は、このようにクチコミに起こっている変化を、「質」、「波及方法」、「情報伝達」 3つの視点から紹介します。
これまでのクチコミは、人を介しながらリアルな場所で伝わるものでしたが、スマートフォンの普及やSNSの一般化により誰もが気軽に情報が発信できる時代になってきています。
1対1のコミュニケーションや1対数人のコミュニケーションから100や1000という単位でのコミュニケーションが一般の人でも可能になりました。直近では読者モデルの方や料理を得意とする方の投稿などは非常に人気で、マイクロインフルエンサーという言葉で呼ばれるようになってきました。
いわゆる人もメディアの一つになっているという見方です。
ただ、私はこの誰もが発信できる時代を、一側面だけで捉えないことが重要だと思っています。発信にも色々あり、発信される情報の多くはまだまだ受け身的なものが多いのではないでしょうか。例えば、何かを得た情報へのリアクションやコメント、また誰かの情報を基に試してみたけど、発信はしないなどがほとんどかと思います。
この業界にいると見失いがちですが、SNSの普及により発信するハードルは大きく下がった一方で、能動的に発信する人はまだまだ少数だと感じています。
しかし、この能動的に発信する少数派に対してのアプローチ次第 では、あまり発信しない人にも情報を届け、大きなムーブメントを作ることができるかと思います。
その際に発信、反応、真似などのクチコミの違いについても考える必要があるかと思います。ここのクチコミの違いを押さえることで情報に拡がりを持たせることができるのではないでしょうか。
一言にクチコミと言っても、人によってそのイメージが異なると思います。
友達との会話、SNSの投稿、クチコミサイトのレビューなど様々な内容、形式、場所でどんどんクチコミが増加し、多様化しています。
最近では「Instagram」「Snapchat」などのビジュアルを用いたプラットフォームの台頭により、テキストだけでなく写真や動画もクチコミの1つとして話題にのぼってくることも多くなりました。
では、クチコミ が波及するにはどのようなアプローチが必要なのでしょうか。
時代に合わせて変わる部分と変わらない部分があるかと思います。
変わらない部分としては、クチコミがどの場所で、誰によって、どのように語られるのかという点を設計するということです。
発信するメディアが変わってもここは不変的であると思います。
逆に変わる部分としては、クチコミにも向き、不向きがある点で、同じクチコミにも発信するメディアや発信する人、発信の仕方によって波及効果が大きく変わることがあります。
例えば、化粧品メーカーが「来年はこのメイクが流行るので、自社の商品を使ってください」と自社のSNSアカウントで発信をしても、恐らく他の投稿に埋もれてしまったり、フォロワーに広告として捉えられスルーされてしまうのではないかと思います。
では、カリスマ女子高生が、同様のことを高校生に向けてファンイベントで新商品を使ったメイク術について話したとします。
そうすると恐らくそのファンは、すぐ真似をしたくなったり、友達にその情報を伝えたくなったりするのではないでしょうか。
一方、これがイベントではなく、twitter上での紹介に置き換えた場合はどうでしょうか。
多くの人にリーチさせることはできるかもしれませんが、イベントよりも恐らく商品に対する反応率が下がり、そのメイクを実践する人が減るのではないかと思います。
これは自分自身に置き換えてもよくある話で、同じような情報でも友達に直接聞いた話と自分の好きなタレントがSNSに発信している内容では、情報を触れた後の自分の行動に落とす確率が変わってくると思います。
SNSが普及することで、タレントやモデル、インフルエンサーなどを使って、そのファンに効率的に情報を届けることができるようになっている一方で、消費者に対するクチコミの届け方を工夫するという意味では、まだまだ議論の余地があるのではないかと思います。
その結果本来リアルな場所で伝えた方が伝わりやすいものまで、SNSというメディアに頼ってしまうことが増えてきているかと思います。
上記のように違った側面を持つクチコミを、一つのキーワードでまとめてしまっては、消費者とのコミュニケーションを間違えることがあるかと思います。
2で話したように、クチコミ波及を起こす際に、どんな情報を、誰が、どこで、どのように 発信するかが重要となってきますが、もう一つの要素として情報伝達の順番というものがあります。
ニュースメディアでも1次メディア、2次メディアのように言われますが、まず情報の基となる1次メディアがあり、その情報が2次メディアやSNSで拡散され多くの人に情報が届いていきます。
クチコミでも同様のことが言えます。
まず、特定の人からネタ(クチコミ)が発信され、その情報を次の誰かが拾い、コメントをしたり、いいね!をしたり、シェアすることで情報が拡散していきます。
少し前は、発信者と反応者だけだったところから、最近では真似やアレンジをして投稿をするという流れができたことで、より情報は伝わりやすくなってきました。
これは画像や動画の投稿が爆発的に伸びたことも後押しになっているかと思います。
情報が1次発信者から2次、3次と拡散することにより、ネット上だけでなく、リアルなクチコミとなって社会に大きなムーブメントを起していきます。さらにその元情報が人によって真似されたり、アレンジされ、発信する人の色がでてくることで、さらに盛り上がりをみせていきます。
直近だとPPAPなどがわかりやすい例かと思います。始まりは高校生を中心に人気のMixchannel やtwitterで真似する人が現れ,その後有名人がtwitter,Youtubeなどのメディアに個人が発信することでキャズムを越え、バリエーションが拡がり多くの方に情報が届いた結果かと思います。
他社がやっているから、成功事例があるから、実施するのではなく、一度立ち止まって情報伝達、波及の経路を想像してみることでより効果的なクチコミ露出が作られるのではないかと思います。
次回はクチコミ量が増加する中で、フローとストックという切り口からクチコミについてお話したいと思います。
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