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ターゲットとのコミュニケーションをプランニングする

久保 隼人 くぼ はやと さん (株)オプト 海外事業部長

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Part.2

 

■「まずは台湾や香港で成果を出したい」と考えるクライアントが増えている。

 

現在、売上で昨年比600%のペースで成長を続ける海外事業部。続いては久保さんに、日本企業の海外進出における今のトレンドについて聞いた。現在、かつての中国への熱は冷めつつあり、中華圏では香港や台湾、そして東南アジア圏のタイ、マレーシア、インドネシアといった国々への関心が高まっている。

 

「4年ほど前まででしょうか。多くの日本企業の目線は中国本土に向いていました。ところが反日暴動などのカントリーリスクにより、最近は引き気味。『中国はマーケットとしては大きく魅力的。でも、攻めにくい』。それが多くの日本企業の本音でしょう。

そんな状況の中、弊社が特に注力しているのは台湾と香港です。この2年半ぐらいの傾向ですが、まずは親日的な台湾や香港を足がかりに、徐々にタイ、マレーシア、インドネシアなどへとビジネスを広げていこう、と考えるお客様が増えている。ですから、まずはここでしっかりと成果をお返しする。そうしないと、その後のグローバル化が鈍化してしまう恐れがあります。もちろん弊社も台湾と香港については必ず成功させたいと考えており、取り扱うメディアの数を日々増やしています。

 

台湾と香港から先でいえば、日本企業の関心が高いのはタイやインドネシア、マレーシアなどです。以前はシンガポールも関心が高かったのですが、実は人口が少なく、市場としての魅力はそこまで大きくない。ネットは普及していてリテラシーも高く、富裕層も住んではいるのですが、スケールは小さい。ゆえに、より人口の多い国を目指す傾向があります。またカントリーリスクこそありますが、中国本土も関心はまだそれなりに高い。日本での"爆買い"が話題となっていることも手伝い、再び相談が増えつつあるのが現状です。ただ、やはり本土での事業拡大というよりも、訪日旅行客のみをターゲットとしたものが多いですね」

 

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参照元:Media Business Asia(http://www.mediabusinessasia.com/article.php?id=673

 

 

では、海外案件ならではの難しさはどんなところにあるのだろう。当然ながら、日本国内でのやり方をそのまま海外に持ち込んでも、効果は薄い。

 

現地のユーザーの動きや商習慣は、日本にいるだけでは把握できません。グループ企業のネットワークを駆使し、現地企業とも密なパートナーシップを築くなどして、現地の状況を的確に把握する必要がある。

また同じ中国語圏でも、台湾と香港、中国本土では使われる字体が異なります。台湾と香港は中国語の繁体字(簡略化されていない中国語の字体)を使いますし、中国本土では簡体字(従来の漢字を簡略化した字体)を用います。そして、リスティング広告においても検索される単語が異なります。例えばホテルの場合、香港は主に『酒店』という単語を使いますが、台湾では『飯店』という単語の方がずっと検索数が多い。また、国や地域によってユーザーのネット上での行動は異なりますし、バナーの訴求内容なども変わってきます。

そして当然、使わせていただくのは現地の媒体です。日本国内であれば日常から媒体と接点を持つことができますが、現地の媒体とは密なコミュニケーションを取りにくい。そして、仕事のスタイルも異なる。国民性もあり、日本国内ほどスムーズには進みません」

 

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■有効な施策は、国によって大きく異なる。

 

 また、商習慣やインターネットの使われ方が国ごとに微妙に異なることも、理解せねばならないポイントだ。

 

「例えば香港はネットの普及は進んでいますが、今も紙媒体が強い。ですから、有料誌も無料誌も含めてフォローする必要があります。また、台湾はLINEの普及率が高く、ブロガーによる口コミ文化が発達しています。ですからLINEやFacebookを使ったインフルエンサー施策を行っていく必要がある。

またマレーシアは、トータルの広告費の中でインターネット広告が占める割合は10%以下程度。まだまだデジタルサイネージや交通広告が強く、ディスプレイ広告が非常に重要になります。そして、口コミ文化が発達しているのはこの国も同様。ユーザーはスマホでの検索はあまりせず、気軽に友達に電話をして『こういうのない?』と聞くことが多いのだそうです。そのため、ブロガーによるインフルエンサー施策はマレーシアでも有効です。

 

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逆にシンガポールは、2台持つ人も多くいるぐらいスマホの普及が進んでおり、PCよりもスマホでどれだけ仕掛けていけるかが鍵。ちなみにシンガポールはネット人口70%で、最多アクセスはGoogle.sgではなくGoogle.comです。これはどういうことかというと、国内の通販サイトやニュースサイトは情報やモノが少ないので、海外サイトに情報を取りに行ったりモノを買いに行ったりしているんですね。ですからシンガポールの場合、ローカルだけではなく、グローバルネットワークを使って配信する必要があります。

このように、国によってリスティング広告やディスプレイ広告、紙媒体やインフルエンサー施策といったように、有効な施策が大きく異なります。だからこそ、ローカルの文化や思考の違いを理解し、お客様の予算をどこにどう配分するか、しっかりプランニングする必要があります

 

久保さんはこれらの国による違いを、どのようにノウハウとして蓄積してきたのだろう。

 

「海外事業を始めた当初は私も何もわかりませんから、もう、聞きまくりましたね(笑)。弊社の強みの一つが、現地の媒体やグループ企業、パートナー会社などの幅広いネットワークを持っていること。子会社でシンガポールに拠点を置くCatcha Digital Asiaとは毎月、電話会議を行っていますし、頻繁に出張もします。またグループ企業でSEOコンサルティングなどを手がけるクロスフィニティが台湾のローカル代理店とパートナー関係にあり、日本からも数人現地に行っているので、彼らに話を聞いたり。とにかく徹底的に情報収集をしていますね。

最も大きいのはGoogleシンガポールとの関係でしょうか。Googleシンガポールはアジア圏のヘッドクォーターなので、Google上における各国の傾向をうかがっています。私達は彼らから地道に情報収集し、実績を積むことでノウハウを蓄積してきました」

 

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現地の媒体やグループ企業、パートナー会社等、幅広いネットワークから情報収集を行う(写真はCrossfinity Malaysia オフィス)

 

 

次回からはオプト海外事業部が手がけた実例を紹介しながら、日本企業の海外進出及び海外企業の日本展開におけるデジタルマーケティングのノウハウを紹介していく。

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プロフィール
久保 隼人

久保 隼人 くぼ はやと

(株)オプト 海外事業部長

1983年5月24日名古屋生まれ。高校卒業後、カリフォルニアのコミュニティカレッジに留学。卒業後帰国し、早稲田大に編入。2008年4月にオプト入社。不動産業界の担当を経て2013年1月、海外事業部の部長に就任

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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