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シェアリングエコノミーの流れは、もはや止まらない
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シェアリングエコノミーの流れは、もはや止まらない
フォトクリエイト時代、結婚式場がクライアントだったをきっかけに、重松さんはスペースマーケット起業のヒントをつかむ。
「土日祝日は稼働している結婚式場も平日はガラガラ。会場の支配人に聞くと、どの式場も平日の法人向け需要を高めたいと、口を揃えて言っておりました。法人営業部を立てて、実際に営業している会社も出始めておりました。
とはいえ、仮にある式場が単独で企業の総務に電話し『こちら結婚式場ですが、ウチを宴会で使いませんか?』と営業したとしても、電話された企業側は、なかなかピンと来ないと思うんですよね。何で結婚式場で宴会なんだろう?と。でも、例えばウチがいろいろな結婚式場を束ね、サービスとして企業に紹介していけば『なるほど、結婚式場のそういう使い方ってあるんですね』という価値観の転換を生み出すことができる。
このニーズは、だいぶ以前から感じていたことでした。飲食店も、例えば昼間などに二毛作的に別の用途で使われているケースはある。また、一等地にあるオフィスの会議室も、土日祝日はほぼ稼働していない。だから、お金になるなら貸したい、と考える会社は絶対にあると思っていました」
そして、現在の事業のビジネスモデルが徐々にでき上がっていく。
「昨年7月にフォトクリエイトが上場。これは卒業するタイミングだと思いました。そして、次は自分でビジネスをすると決め、事業のネタを100個ぐらい考えて一つ一つ潰していきました。妻がベンチャー企業支援の仕事をしていることもあり、ああでもないこうでもない、と二人で話したりもしましたね。
僕はアイデア出しには自信がありました。発想型の人間なので、アイデアはいくらでも出てきます。また昔から分析をすることが好きで、人のビジネスを考察するのも好き。新しいことを考え、0から1を作ることが好きで、限りなく多くの事例を見てきました。そんな中で今回のビジネスのアイデアは、いろいろなものが積み重なって、ぱっと “降りて来た”。『ああ、これやりたいわ』と。
最初から、ある程度の自信もありました。私はもともとB to Bが得意。その点このビジネスはB to Bでも、ゆくゆくはC to Cもいける。そして何より、海外で成功している事例がすでにあった。アメリカには、同じ空きスペース活用のビジネスモデルがたくさんある。要は、AirBnB(個人宅などの空き部屋を有料で貸し借りできるウェブサービス)のビジネス版ということです。
世界中どこにも事例のないビジネスは怖い。誰も成功していないマーケットには、必ず何かしらの障害が存在するものです。そして日本にも、空家の増加という社会問題と、シェアリングエコノミーという決して止まらない大きな流れがありますからね。まあ何より、楽しいビジネスになる、という確信が自分の中にあったことが、結局は一番大きいのですが(笑)」
今年1月に会社を立ち上げるとともに、サイトの広報戦略を考えた。
「まず、サービスをインした時に話題になっている必要があると思いました。今の世の中に、会議室の検索サイトはたくさんある。その中で目立たなくてはならない。
そのために、まずは海外のサービスを研究しました。アメリカの空きスペース活用ビジネスの中で、最もメディアに取り上げられていた会社が何を売りにしていたのかを研究すると、例えば『マリリン・モンローの家でパーティをしよう』とか『戦艦アイオワも借りられる!』というように、今まで使ったことのない珍しい場所を借りられるサービスなんだ、ということを全面に出していたわけです。そこで、ウチも同じような打ち出し方をしました。そしてサービスローンチの段階でTechCrunch(主にIT系ベンチャーやウェブに関するニュース配信サイト)さんに取り上げていただき、それを堀江貴文さんが絶賛して下さったことから、大きく広まっていきました。
まずは影響力のあるメディアを起点に拡散させていくことが狙いでした。その際に大事だと思ったのが、ビジュアルです。私達がメインで出したのはマイナーリーグの野球場の写真なのですが、これがスケールや世界観を伝えるのに最適ではないかと。たまたま僕の知り合いがここで働いていて、運営する会社の社長が日本にいらした時に、許可をいただきました。この他にも、写真には気を使いましたね。写真がいいと話題になりやすく、メディアとしての格も上がりますので」
そしてもう一つの戦略が、ベンチャー系のビジネスコンテストに出ることだった。重松さんはネットカンファレンスで最も権威があるといわれる「IVSローンチパッド」で準優勝、「Bダッシュキャンプ」「Rising Expo」で優勝するなど、著名なビジネスコンテストで3つの賞を獲った。
「それが話題になり、メディアが記事を書いてくれたことでネット上の話題になり、そこから紙媒体に行き、新聞や雑誌に取り上げていただきました。そしてテレビ、という流れです。テレビは昔からこういうネタは好きなんです。ユニークなスペースは絵になりやすいし、意外な切り口として取り上げやすい題材なので、よかったのでしょう。ローンチ段階での広報戦略は、非常に上手くいったと思っています」
こうしてこの4月にサービスをスタートし、スペースマーケットは順調なスタートを切った。
最終回となる第四回では、重松さんの考えるブランド戦略やマーケターとしての考えの根幹、そして今後増えていく C to Cビジネスの可能性などについて、話を聞いていく。
1976年1月27日千葉県出身。
早稲田大 法学部を卒業後、2000年にNTT東日本入社。法人企画営業やPR誌の編集などに携わり、’06年フォトクリエイトへ。同社では一貫してウエディングな どの新規事業を手がける。
2013年に退社し、2014年1月に株式会社スペースマーケットを立ち上げ、4月よりサービス開始。
※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです