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決してブレない、ストイックな姿勢が育てるブランドへの愛
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決してブレない、ストイックな姿勢が育てるブランドへの愛
朝夜の洗顔石鹸とオールインワン美容液によるシンプルケアを提案するP.G.C.D.。「素肌が美しい人が、いちばん美しい」というフィロソフィーのもと、女性にとって最も根源的な美しさ=素肌の美しさ=その人そのものの美しさを追求している。今、そんな彼らの基本戦略の根幹にあるのが、自社サイトだ。
「店舗を持たない私どもにとって、このサイトは銀座やパリのシャンゼリゼ通りにある、ブランドの路面店と同じ存在です。P.G.C.D.の世界観そのものを表すツールなので、細部までこだわっています。
例えば、文字要素。実際に見ていただくとわかりますが、私どものサイトでは、ほとんどのテキストコンテンツを画像化しています。なぜかというと、サイトを見るお客様の環境によって、フォントが変わることがあるから。私どもは文字もデザインの一部と考えていて、お客様には、こちらが選んだフォントで読んでいただきたいんです。フォントもまた、P.G.C.D.の世界観を示す大切な要素なので。
ただし当然ながら、美しければいい、というわけではありません。見た目が美しいけれど重い。使いやすいけれども、スタティック(静的)で色気がない。どちらのサイトもよくあります。美しさと使いやすさのバランスをいかに取るか。それはとても大きな課題です」
村上さんが昨年入社して間もなく行ったことの一つが、サイトのSEO(Search Engine Optimization=検索エンジン最適化。検索エンジンを対象に、検索結果でより上位になるようウェブページを書き換えること)対策だった。
「テキストを画像化することには、検索に引っかかりにくくなるリスクがあります。以前は、例え検索結果で上位に上がることが難しくてもサイトの世界観を保つことを優先していたので、主なSEO対策は外部被リンクが中心でした。。
しかし、昨今のSEO対策は、外部リンクだけでは順位が上がりにくくなり、ユーザーが検索エンジンで探しているキーワードと、各サイトの情報やコンテンツとのマッチングの精度が重要視されるようになってきています。テキストを画像化したことがネガティブな要素になりかねない。要は、テキストを画像化すると、検索エンジンボットがそのページに何の情報があるのかを認識してくれないのです。
そこで内部施策として、サイト内のテキスト情報をオルトタグ(HTMLファイルの中で、画像につける代用テキストのこと。画像が表示されない際などに使われる)に入れるなどの対策を行いました」
そのように、自社サイトには敢えてひと手間かけた取り組みを実施し、目指す表現方法と実益のバランスを取っています。昨年、P.G.C.D.サイトは日本Webソリューションデザイン協会(JWSDA)の「JWSDA WEB SOLUTION DESIGN AWARD」において、コーポレートサイト部門の優秀賞を獲得。サイトの美しさとCVR(コンバージョンレート)の高さ、そしてクオリティの高い写真を多数使用しているとは思えぬ動きの軽さといったユーザビリティが高く評価される結果となった。
P.G.C.D.のブランド戦略はもちろん、ウェブで完結するものではない。店舗を持たない分、顧客との接点をいかにして持つか。ユーザーと実際に接する機会も、もちろん大切だ。
「当然ながら、カスタマーサービスには力を入れています。例えば自社内にあるコールセンターには、専門の教育を受けて認定された『スキンケアコンサルタント』が常駐。商品の注文だけでなく、クレームや肌についての相談への対応などのアフターフォローを行っています。
実は、私どもの発行する冊子などの写真に使っているモデルは基本的には、社員やお客様なんです。もちろん、全員ノーファンデーションですね。私どもでは『肌育サロン』という、商品の使い方を知り、実際に洗顔ソープの泡立てやお手入れを体験できる場を定期的に設けています。そこでインストラクターを務めている者が、弊社のスキンケアコンサルタントであり冊子やチラシに実際に出ているモデルだということも、安心感や信頼感につながっている、とある既存のお客様からお聞きしました。
有名人を安易に使わないことが、信頼につながっている面も多々ありますね。以前、お客様に『私達が有名人をモデルで使ったらダメですか?』と聞いてみたことがあるんです。すると『女優さんや、モデル、タレントの彼女達はどうせ、他にもいろいろやっている。P.G.C.D.の製品だけを使っているわけがない、と思ってしまうし、ウソっぽい』とおっしゃってました。正直、ああ、よく見ているな、と思いました。
このように実際にお客さまに接していくことで、既存のお客様が私達を評価して下さる理由がはっきりとわかりました。それは、頑固なぐらいP.G.C.D.というブランドが世界観にこだわり続けるストイックな姿勢。コミュニケーションにおいて媚びないこと、ぶれないことが大事なんです」
またP.G.C.D.が、必要最低限の商品ラインナップで勝負していることも、ユーザーから高い信頼を得る理由の一つだろう。
「お客様の多くが『他のたいていのメーカーは商品ラインナップを増やして、いろいろ買わせようとするのが嫌』とおっしゃいます。P.G.C.D.とはフランス語で『最大公約数』という意味。無駄なもの削ぎ落とし、必要なものを必要な分だけ使用するお手入れ。まさしく、『最大公約数』であり、すべてにおいてシンプルである、ということです。シンプルとは、究極。
『これだけで大丈夫』と言い切れることが、信頼につながっていると考えています」
それならばP.G.C.D.の現在の商品戦略はラインナップを増やすことではなく、今あるものをより多くの人に知ってもらい、リピートしてもらう、ということなのだろうか?
「そうですね…それは半分正しく、半分そうではないんです」
1967年山形県米沢市生まれ。広告系制作会社、デジタルコンテンツ制作会社の経営を経て、2001年ネットイヤーグループ入社。戦略系ウェブマーケティングのコンサルタントを務める。
2007年に入社したカルチュア・コンビニエンス・クラブでは、ツタヤオンラインでの事業拡大戦略をはじめ、TSUTAYA事業本部にて全国のFC加盟企業と店舗を対象にしたウェブマーケティング全般を担当。
2012年楽天入社。モバイルコミュニケーション事業の事業戦略部にて、マーケティング事業全般を担当。
2013年7月、P.G.C.D.Japan(ペー・ジェー・セー・デー・ジャパン)入社。マーケティング部長兼上場準備室マネージャーを務める。
※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです