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既存ユーザーを見直し、新規顧客を獲得するためのブランド戦略
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既存ユーザーを見直し、新規顧客を獲得するためのブランド戦略
「女性にとって、もっとも根源的な美しさとはなんでしょう。
私たちは、それは素肌の美しさだと考えます。
なぜならば、素肌の美しさとは、その人そのものの美しさだからです。
ファンデーションが美しい人より、メイクが美しい人より、ヘアが美しい人より、
ネイルが美しい人より、ファッションが美しい人より、ジュエリーが美しい人より、
素肌が美しい人が、いちばん美しい」
そんなフィロソフィーを持つブランドP.G.C.D.(ペー・ジェー・セー・デー)。大手企業のウェブマーケターというキャリアを経て、P.G.C.D. Japanに入社した村上さん。これまでに培ったマーケティングのノウハウはここでも使えるものだとわかった反面、工夫も必要だった。例えば広告予算は、前職の楽天などと比べるとケタが一つ少ない。その中で、どうやって商品の魅力を伝えていけばいいのか。さまざまなことを考える中、重視したことの一つ。それが認知媒体(商品を知り、購入にいたるきっかけとなった媒体)と獲得するチャネルの可視化だった
「一つ一つの認知媒体の費用対効果を検証する仕組みをつくり、雑誌、新聞の折り込み広告、商品同梱系の媒体、インターネットの検索広告など、それぞれの媒体への予算の振り分けを考え、広告費をどんな割合で使うべきかをあらためて検討しました。どの認知媒体によって新規顧客が獲得されたかをチェックすると、まず、インターネットと紙をはじめとするリアルはほぼ半々。雑誌広告や新聞の折り込みチラシ、通販の同梱チラシといった紙媒体の効果は、依然として高い。そして紙媒体の中でも、ある特定の雑誌、大手通販会社の商品同梱チラシなどは、新規のお客様獲得への貢献度が高いことも明確にわかりました。
認知媒体の選定は重要です。具体的にどの媒体の費用対効果が高いのかは、100%すべて検証しています。例えば、認知媒体の選定においては、30代以上がよく見るものを重視。なぜなら私どもの商品価格は高めで、お客様の平均年齢は40代半ば。20代はスキンケアよりも"塗る"アイテムにお金をかけますし、可処分所得も決して多いとはいえません。そのため私どもも、30歳近辺から上の方に『そろそろこちらの方へ』とお声がけしていくイメージで考えていますので」
それらの実施媒体全ての効果検証の結果、「認知のための媒体」と「顧客を獲得」し「フォローアップするための媒体」それぞれに何がふさわしいかが見えてきた。
紙媒体をきっかけとして商品に興味を持ってもらい、新規購入へと結びつける。そして、それをウェブサイトやFacebookページのフォローから、リピート購入へとつなげる。P.G.C.D.の新規顧客の獲得と既存顧客に対するコミュニケーションの、現在の基本的な考え方だ。
「売り上げをアップさせるために必要なことは、新規顧客の開拓と既存顧客のCRM(Customer Relationship Management=顧客へのコミュニケーションプランの実施やマネージメント)です。現在、私どもの売り上げの多くは、既存のお客様のリピートによるもの。ゆえに、既存のお客様にEメールやDMをお送りしたり、Webサイト、SNSでコミュニケーションを取ることはとても大切です」
P.G.C.D.が現在、検索エンジン対策やリスティング広告に加えて重要視しているウェブ戦略が、FacebookなどのSNSの運用である。
「今、企業からお客様にお送りするEメールは、徐々に読まれなくなっています。この記事を読んで下さっている皆さんもそうだと思いますが、多くの会社やお店からEメールが送られてきますよね。その量が多くなり、クリックレートが下がっている。
もちろん私どももお客様にお送りするEメールやDMを重視してはいますが、全員が必ず読んで下さるとは限りません。ですから、その部分を補完する必要がある。お客様にお送りするEメールやDMと、購買の間にある"隙間"にFacebookが使えるのではないか、と考えました」
送ったEメールを仮に読んでもらえなくても、Facebookにアクセスした時に出てくる投稿やバナーを見ることで、思い出してもらう。顧客との関係が途切れないために、SNSなどを駆使する。そして忘れないでもらう。それがSNSの利用方法として、新たに見直した施策である。
「Facebookの運用の仕方は①オーガニック運用、②広告運用の二つがあります。ブログのように、日々の情報を配信するのが①です。それに対して②はFacebook内で、例えば私どものお客様だけを対象にバナーを出したり、Facebookユーザーで『首都圏の女性で30代以上』などの顧客セグメントグループを設定して広告を出す、P.G.C.D.のサイトを訪れた人にバナー広告を出すといった広告運用です。Facebook広告でのクリックレートは低くても1%台、高いときは8%台と非常に高く、Facebook社で事例として使われています。この①と②を上手く使うことで、お客様とのエンゲージメントを保つことを意識しています」
またP.G.C.D.の商品がフランスの「ヴィクトワールドゥボーテ賞」やグッドデザイン金賞を受賞したことや、6アイテムがYahoo! BEAUTY「あなたが選ぶ通販コスメ大賞」に入賞、といった貢献も大きい。
「お客様が『私が愛用しているのは、やはりいいものなのだ』と再認識し、安心していただく。そしてお知り合いの方に、自信を持って勧めていただける。これらの賞をいただけたことには、そういったメリットもありました。既存顧客にさらに私どものブランドを愛していただく、大きなきっかけとなったのは間違いありません」
そして上記の他にも、多くの独特なブランド戦略を展開するP.G.C.D.。
次回はそのさらなるディテールについて、掘り下げていく。
1967年山形県米沢市生まれ。広告系制作会社、デジタルコンテンツ制作会社の経営を経て、2001年ネットイヤーグループ入社。戦略系ウェブマーケティングのコンサルタントを務める。
2007年に入社したカルチュア・コンビニエンス・クラブでは、ツタヤオンラインでの事業拡大戦略をはじめ、TSUTAYA事業本部にて全国のFC加盟企業と店舗を対象にしたウェブマーケティング全般を担当。
2012年楽天入社。モバイルコミュニケーション事業の事業戦略部にて、マーケティング事業全般を担当。
2013年7月、P.G.C.D.Japan(ペー・ジェー・セー・デー・ジャパン)入社。マーケティング部長兼上場準備室マネージャーを務める。
※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです