はじめに『願望』ありき。マーケティングはあとづけ
こんにちは。僕は「Tokyo graffiti」という、一般人参加型の雑誌の編集長をしております。普段からスタッフに、「あまり他の雑誌を見るな」「読者アンケートはするな」なんて、雑誌編集部としては、たぶんちょっとへんな事を言っております。僕たちのような小さな出版社が雑誌を作る時、他誌を参考に見たり、読者アンケートを参考にしたりすると、僕はプラス影響よりもマイナス影響がとても大きい気がするからなんです。
今から9年前、「Tokyo graffiti」を創刊した2004年は、実は雑誌創刊ラッシュの年でした。残念ながら、すでにもう何冊かは休刊になっていますが、当時は、大手出版社が広告をいっぱい入れた創刊号を、コンビニに次々とずらーっと並べていました。そんな中、零細企業の自分たちの雑誌もひっそりと創刊いたしました。
大手出版社は、たぶんかなりの「マーケティング」を含め、大きな先行投資をして雑誌を創刊するものと思われます。読者の想定年齢層やら、テイストやら、セグメントやら、想定スポンサーやら、競合誌やら、たぶんいろいろと。
そんな中、僕はまったく「マーケティング」をしませんでした。
なぜでしょう。
次の中から選んでください。
- マーケティングなんかしないで、自分の感覚だけを信じるんだぁ!
- マーケティングで勝負しても大手に勝てるわけないじゃんかぁ!
- それなりのマーケティングをやるお金も時間もない!
- マーケティングって、そもそも、なんか面倒くさそう!
- 仮にいずれ愛読者になる人がいても、まだ世の中に存在していない雑誌を想像して「そんな本があったら読みたい」などという想像力はない!
- なんか根拠はないけど、そのうちなんとかなるんじゃない?
答えは、
ちょっと予想通りでつまんないと思いますが、
その通り、全部です。
特に5番目は、今でもよくスタッフにも言っています。
そんな僕が、マーケティングに関して書かせていただく事になりました。
ある意味、ほんとにすみません。
かの秋元康氏が、AKBについてこんな事を言ってました。
「AKBはマーケティングはまったくしていない。自分の感覚でいいと思ったものを作った」(僕のあいまいな記憶による大雑把な要約)
そうなんです、僕と同じなんです。
規模は僕の方は数万分の一だけど。
AKBが出る前、たしかに世の中は、どっちかというとギャル文化がもてはやされていて、黒髪のポニーテールなんて、なんか時代遅れって感じでしたよね。秋元氏は、「やだやだぁ。最近増えてるギャルなんて嫌いだよぉ。やっぱり制服の似合う黒髪ポニーテールが僕は大好きなんだぁ。みんなだってそうだろう?」って心の中で叫んでいたに違いありません。
今となっては、AKBは、時代が求めていた、とか、こうなるのは必然だった、とか、たぶんマーケティング的な事を「あとづけ」で言ってる人も、たぶんいるかもです。でも、はじめは「みんながどう思うか」ではないんです。「市場が求めてる」じゃないんです。「ボクこうしたい!」という『願望』ありきなんです。
そんなわけで、僕はAKBは個人的にはまったく好きになれないのですが、「はじめに『願望』ありき。マーケティングはあとづけ」という、いけないコンセプトで書いてみたいと思います。
あの綾波レイも、シンジ君にやさしく聞いています。
「なにを望むの?」
かつて、とある猿はなぜ二足歩行を始めたのか。決して、とある猿はマーケティングで、いろいろ調査して立ち上がったんじゃない。とある猿は、きっと「ボク立ってみたい!」という願望で立ち上がったんだ。…そう思いたいのです。