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見えないぐらい遠くに橋が架かった時、新たな何かが生まれる

原田 未来 はらだ みらい さん (株)ローンディール 代表取締役
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Part.4

 

■取締役が、普通に営業に出かける

 

一昨年のローンチから、徐々に実績を積み上げつつあるローンディール。レンタル移籍の形態はこれまでの「大手企業→ベンチャー」というパターンから、徐々に多様化されつつある。

 

「昨年10月からはじまっている案件は少々ユニークです。テクノライブという社員150人ぐらいのシステム開発会社の取締役が週3回、LOUPEという小さな教育系ベンチャー企業に出向したのです。レンタル移籍したのは30代半ばで、もともと管理業務や人材採用など、バックオフィス系の仕事をやってきた方でした。

多くのシステムインテグレーターは受託開発の仕事が多く、クラウドサービス隆盛の今、将来への不安を抱えています。その中で、自社で新たなサービスを作るにはどうしたらいいのかを考えておられました。でも、ある程度ビジネスモデルが完成した組織の中で、新規事業をどう立ち上げればいいのかわからない。そこで0から1を生み出す会社にレンタル移籍したい、ということでした。

LOUPEさんは学校の先生向けのポータルサイトを作っている会社。社員たった二人のベンチャーなのですが、今すごく伸びています。ただし、たった二人ですから、システマティックな運営はしていなかった。その中で地固めをしていきつつ、新しい事業を作る。要は営業もやるし人事制度も作るし、という感じで、もう何でもやるという(笑)

 

左:株式会社LOUPE代表の浅谷さん 右:同社に週3日勤務(レンタル移籍)中の後藤さん

 

このレンタル移籍。二つの面白い変化があったようだ。

 

「まず一つ目が、さまざまなツールの導入です。小さな会社なので、社長さんが独断で、シリコンバレーで使われているような営業管理やタスク管理のツールなどをバンバン入れるんです。その影響で、いいと思ったら、自分の会社にも同じものを導入するようになったそうです。社員150人の会社ですから、ソフトの入れ替えはそれなりに大変。でも、そんなことはぜんぜん気にしない。実際に自分が使った感触で『こっちに換えれば時間がこれだけ減る』という確信があるから、迷わず導入する。

もう一つはやはり経験ですね。取締役が普通に営業に出かけるわけです。それで出向元に戻った際に、社員に『営業がなかなか大変で』みたいな話をする。それが社員にとって刺激になり、会社の営業成績が大幅に上がったそうです。そして『次は僕が行ってみたいです』と志願する方も出てきたりと、ユニークな効果が生まれているとか

 

今後は他にも、いろいろな形が出てくるだろう。受け入れ先の経営者がどんな思いでビジネスで取り組んでいるか。それもまた、受け入れ先を選定する際の大事な要素になってくるだろう。

 

■都合のいい逃げ道を作っていたら、何も始まらない

 

受け入れ先の選定について、決めていることがある。その一つが「近い業界には人を送らない」ということだ。

 

「例えば教育業界の会社の人が、教育系ベンチャーに出向する。あまりにも普通ですよね。もともと転職する時、近い業界に行く人は多い。同じ業界の中で人がぐるぐる回るようなケースは、すでによくありますよね。同じ業界の中でのレンタル移籍はあまり意味がないし、スパイのように扱われてしまう可能性もある。これは日本企業の悪い面ですが、情報漏洩にはナーバスになる傾向がありますし…。

 

 

例えば教育業界の人が宇宙業界に出向するとか、ぜんぜん違う業種に飛び込んでみる。そこから学べることも多いし。教育×宇宙といった、今までにないコンテンツが生まれる可能性もある。ですから僕が申し上げているのは『なるべく自分達から遠い会社に行きましょう』ということ。見えないぐらい遠くに橋が架かった時、何が生まれるか。考えるとわくわくしますよね。それを演出できたら、このビジネスはもっと広がっていく

 

少なくとも言えるのは、ローンディールが手がける企業間のレンタル移籍は、働き方の多様化に伴って、今後ますます増えていくということ。

 

「大きなところでNTTドコモさんの導入が決まりまして、今、エンジニアの方が一人、Georepublic Japanさんとう会社に出向しています。Georepublic Japanは、オープンソースGISやモバイル関連サービスの開発に強みを持ち、グローバルにエンジニアが協働する開発会社。『39works』という、ドコモさんの新規事業創出プログラムにおける取組の一つで5か月間のレンタル移籍を予定しています。プログラミングのスキルを向上させ、ベンチャー企業と一緒にサービスを開発していくことができる人材を育成したい、という考えから実現しました。

話が進んでいる会社はいろいろあります。今年の春~夏にかけて、あと6~7人のレンタル移籍が開始される見込みです。今後は大企業からベンチャー、という構造に限らず、いろいろな組み合わせを実現していきたい。例えば、地方へのレンタル移籍もその一つ。考えているのは地方というか、故郷ですね。地域の課題って、やはりその地域に愛着がある人が解決すべきだと思うんですよ。企業の人材が、その人の故郷を活性化させるプロジェクトに参加するのは、大きな意義があると思いますね」

 

3月21日に開催された【LoanDEALフォーラム2017春】なぜあの大企業はレンタル移籍の導入を決め、ベンチャー企業に挑む者たちは何を志すのか?

 

まだまだ解決すべき課題がたくさんある中、最も大事なことは「レンタル移籍から帰ってから、その経験を発揮できる環境をいかに作るか」だという。

 

「行ってからではなく、行く前からしっかり考えておくことが大事です。企業にしっかりと『この人を今までこう育ててきて、今回こういう経験をさせて、帰ってきたらこういう仕事で活躍させよう』という部分までを含めて、考えていただく。そんな環境を整えなくてはいけません。レンタル移籍の下準備から出向中のフォローアップ、そして終了後のキャリアデザイン。僕らもまだまだ試行錯誤中なのですが、どのようにメンタリングをしていけばモチベーションが高まり、学びを深めることができるのか。そこはまだまだ固まっていない。もっと実績を積まねばなりません」
思えば会社を立ち上げる前から、一つの確信があった。
それは「社外に出ることで、人は絶対に成長できる」ということ。その思いが揺らいだことは一度もない。

 

独立って、やっぱり怖い。だからこのアイディアを思いついたころ、実は『会社を辞めず、どうにかしてこっそりできないかな…』なんて思っていたんです。でも考え直しました。だって、このサービスを使ってくれた人にとって、絶対に成長につながる。それは、もしかしたらその人にとって人生の大きなターニングポイントになるかもしれない。そんな、人様の人生に関わる仕事をしている自分が、都合のいい逃げ道を作っていたら、何も始まらない。それに気づき、腹をくくりました。

当時、人材ビジネスをやっている方やさまざまな起業家の方に、このビジネスモデルをお話ししたのですが、たいていの方から無理だろうと言われました。そんなの成り立たないよ、という感じで。でも僕からすると、どうして成り立たないのかがわからなかった。うまく説明できないけど、やりてぇんだよ!これ、絶対必要だよ!という思いで独立したんですよ。

 

 

結局、飛び込み営業みたいなことは一度もせずに現在に至っています。今は大企業さんだけで、200社近くとつながっている。それは、大企業に在籍している30代前半ぐらいの、まさに僕らがターゲットにしたいような方々が『自分がそれを使ってみたい』とか『うちの会社にはこれが必要だと思う』と評価し、上司や人事の方につないで下さったからです。そこから、徐々に大きくなっていき、僕はこのビジネスの成長を確信できた。

僕は『年間で平均10人のレンタル移籍を手がけるようになりました。とりあえず食べていけます』みたいな状態を目指しているわけではまったくありません。どうしたら今の状態から、年間1000人、2000人、1万人が使ってくれるサービスへと成長させるか。今の課題はそれです。もっともっと多くの人に、ローンディールを使ってもらいたい。そのための施策を、今後考えていきます」

 

目指す頂は、まだまだ先にある。今のビジネスモデルへの確固たる自信を胸に、原田さんは、企業間のレンタル移籍という働き方の新領域を、一気に切り拓いていくことだろう。
(終わり)

 

文=前田成彦(Office221)/写真=三輪憲亮/撮影協力=PR TIMES

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プロフィール
原田 未来

原田 未来 はらだ みらい

(株)ローンディール 代表取締役

1977年千葉県市川市生まれ。2001年に立教大を卒業後、ラクーン入社。同社営業部長として2006年東証マザーズ上場に貢献。その後カカクコムを経て、2015年に株式会社ローンディールを設立。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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