EC事業者から見たオムニチャネル

吉川 保男 [記事一覧]

http://spicelife.jp/

株式会社spice life代表取締役社長。 2007年5月に「株式会社spice life」を設立。オリジナルTシャツをウェブでデザインしてそのまま1枚から購入できるEC「tmix」を運営。 世の中に刺激(spice)を与えられるようなインターネットサービスを創造し続け世の中に新しい価値を作り出すことを日々考えています。

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Vol.1
吉川 保男「ECのちょっと先の未来を妄想してます」

 

 

はじめまして。spice life代表の吉川と申します。

今回ご縁があってコラムを執筆させて頂くことになりました。

よろしくお願いいたします。

 

このコラムでは、自社EC運営会社代表の私が自社事業を伸ばすために情報収集する中で、これは!と思うことや、実際に実践していることなどをご紹介していきたいと思います。

 

今回はEC事業者から見たオムニチャネル、についての話です。

 

弊社ではオリジナルTシャツECのtmix(ティーミックス)を運営しています。2009年にECサービスとして始めましたが、今年の3月にはオフィスにショールームをオープン(以下写真参照)しました。このネットtoリアル(OtoO)の取り組みの根底にあるこれからのトレンド、 ECネット企業のショールーム型ストアの取り組み(ECオムニチャネル)がいかにいままでの店舗と違い、これからの店舗づくりを変えていく可能性があるか、について書こうと思います。

tmixショールームの様子

 

リアルの小売業が取り組んでいるオムニチャネルと、ネット企業のオムニチャネルは中身が全然違います。リアル企業のオムニチャネルの話は新聞でもしょっちゅう出てくるほどになっていますが、このECネット企業のショールーム型ストアの取り組みは日本ではまだあまり紹介されていません。

 

実はこの先進的な取り組みでアメリカのECスタートアップのいくつもが成功しだしています。 代表的にはアパレルのbonobos(ボノボス)という企業です。

bonobosは2007年創業、ネットショップから始め今はリアルショップ(bonobosガイドショップ)をサンフランシスコやニューヨークなど19店舗展開しています(2015年9月現在)。

 

この店舗に実はリアル企業の店舗にはないネット企業ならではの先進的な特徴があります。

それは、

1.在庫を持たない

2.店舗で買う場合もネットショップで決済

3.集客はネットから、と割りきっている

 

というところです。またその特徴により以下のメリットが出てきます。

 

家賃/店舗運営のコストを最少化

店舗販売の収益性をあげられる

出店スピードを圧倒的に早めることができる

 

以下でもう少し詳しく説明します。

 

1. 在庫を持たない

店舗には商品のラインナップは展示していますが、そこで販売するための在庫がありません。

お客様は、そこで商品を見たり試着したりできますが、商品は持ち帰りできないのです。

 

「え?商品持ち帰れないの?」

と思いますが、持ち帰れなくて困るのはすぐに利用したい場合だけで、後日送られて来たほうが荷物になりません。 色んな所で買い物をして手荷物が増えた時の邪魔さがないんです。カフェで休憩するときも邪魔にならない。

ちなみに、bonobosでは当日発送、最短翌日着なので結局購入して翌日には着ることができます。

 

少し先の未来では、ショッピングに出かけても持ち帰らないのが当たり前になるかもしれません。

 

また当然ながら店舗在庫管理の必要もありません。

在庫の管理が必要ないということは店舗側にとってかなり大きなインパクトです。

商品出しや陳列整理などの作業がなくなる、つまり接客のみに集中できます

ショップ販売員の日常業務の過半は品出しや商品整理など店内物流業務らしいです。

これがなくなる。結果、店舗運営コストが下がります。

 

 

2. 店舗で買う場合もネットショップで決済

見たり試着したりして欲しくなった場合は店頭のタブレット端末を使って商品を買うのですが、 ネットショップからカートに入れて買います。

自宅でネットで買う時と全く同じように買うのです。

お店にはレジもないし、スマホ決済のSquareのような端末で決済もしません。

 

なので現金を扱いません。現金管理がない。これでかなり店舗運営がラクになる。

お金目当ての犯罪にあうなどのリスクもありません。

 

 

3.集客はネットから、と割りきっている

検索、ソーシャルメディア、ネットブランディングなどとにかくネットを中心として店舗に来てもらうようにしています。(ECサイトから実店舗に誘導するウェブルーミング)。

なので路面店、目抜き通りになくて構わないのです。一本奥に入った通りの2階で可能。 その代わりに店舗にお客様を楽しませる仕掛けを作り、自然にネット口コミが拡散されるよう工夫しています。

いかにお客様とつながっていくのか(ロイヤリティよりエンゲージ)が重要であり、そのために何を行うかを考えています。

 


 

これらの特徴があるとどうなるか?

店舗運営コストが大幅に下がります。そうなると、損益分岐点が下がり、利益を早期に出すことが可能になります。 そして出店スピードを圧倒的に早めることができるようになります。

またこのショールームストアのモデルであれば、店舗物流も最小限、店舗教育は接客中心、現金を扱わない、などから海外進出のコストやリスクも低くなります。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

このショールームストアのモデルがあることで、リアル店舗にチャレンジできるスタートアップ、アパレルブランドや他ジャンルのお店が増える予感がします(もちろんネットでの集客が重要)。

また従来のリアル店舗のスピード感ではなくネットの世界のようなスピード感で店舗が一気に出現し人気化する、ということもあり得ます。

 

つまりこれからの未来では思いもしないブランドがネットから出現しそこから現実の世界をガラッと変えることが起こるかもしれません。

リアル企業でネットに弱くこのインパクトを理解できないところはあっという間に衰退してしまうかもしれません。これがアメリカだけでなく世界中で起こります。

 

日本でもEC発ショールームストア(ECオムニチャネル)は爆発的に増えるでしょう。 路面じゃなくてもいいし、目抜き通りじゃなくてもいい、GoogleMapで辿り着ければいい、そうなれば今までお店がないところにもお店ができる、結果、街のありかたが変わる、そんな未来がすぐそこに来ているかもしれません。

 

そんな未来を妄想すると楽しみですね。

それではまた。

 

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