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世の中に、もっとコピーライターを!

小西 利行 こにし としゆき さん POOL inc. 代表取締役

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POOL inc.は広告企画、企業ブランディングそして都市開発までを幅広く手がけるクリエイティブカンパニー。
先日、初の著書伝わっているか?を上梓した代表の小西利行さんに、自らのキャリアを軸に「伝えることのプロ」であるコピーライターという仕事、そしてこれからの時代における「伝えることの重要性」について、話を聞いた。

文=前田成彦(Office221) 写真=三輪憲亮


 

Part.1

 

■コピーライターとは、コンセプターである。

 

小西利行さんはもともとコピーライターであり、現在はクリエイティブディレクターそして劇作家や絵本作家という多彩な顔を持つ。今回、小西さんの「企み」を聞くに当たり、まずは代表的な肩書であるコピーライターという仕事について、もっと深く知ることから始めたい。

 

「コピーライターとは、広告のコピーを書く人だと思われています。確かにそうなのですが、すべてではありません。コピーライターとはもっとコンセプチュアルな、広い領域をカバーできる仕事なんです。

例えば『デザイナー』という職業はここ10~15年で大きく地位を上げ、一般的なものになってきました。デザイナーが設計するマンションは『デザイナーズマンション』と呼ばれています。これ、ちょっといいですよね。他より優れた何かがある、と思わせてくれます。でも『コピーライターズマンション』はまだ存在しません。そう言われても世間の人には何のことだかわかりませんし、変な名前だと思われてしまいますよね。つまり、コピーライターの仕事がどんなものか、その本当の姿は、まだまだ世間に知られていないんです」

 

小西さん曰く、コピーライターの仕事とは「言葉によってコンセプトを作ること」

 

「要は、企業が進むべき道を決めるための相談相手ですね。世の中の人が幸せになる方向や、モノを売る人が売れてよかったと思える方向を示して、クライアントと走る。その方向を見定め、想像し、言葉にする人間。それがコピーライターです。

コピーライターとは、言葉という誰もが使うものを駆使して、世の中の難しいものを簡単にする。
そして、人々の行動を作り出す仕事です。そう考えると、デザイナーという職業が広く認知されていったように、コピーライターとは広告の1フレーズを書くだけではない、とても大きな領域をカバーする存在。それを、もっと多くの人に知ってほしいと思います」

 

コピーライターが持つコピーライティング技術。それをもっと利用すれば、世の中に必要なアイデアを、より多くの人に浸透させることができるのだ。

 

「商品開発からそれが消費者の手に渡るまで、すべてにおいて言葉を巧みに操れる人がいれば、みんなが幸せになれる。難しい目標を1行のセンテンスで表したり、いろいろな意見が出て錯綜している方向性に対して『こうすればいい』と変えることができる。

コピーライターは、言葉を駆使することで難しいことを簡単にできる。そして人の心を動かし、行動を作ることができるんです。だから、いろいろな会社の社長さんが『うちにも一人、コピーライターがほしいなあ』と思うようになってほしい。それが、今の僕の願いです」

 

そう。つまり今の世の中には、コピーライターがぜんぜん足りないのである。

 

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■入社時はマーケター志望だったが…。

 

コピーライターの職域はとても広い。
「だからこそ、みんなもっとチャレンジすべき」と小西さんは語る。

 

「例えば僕のところに都市開発の案件が来るということは、言葉を使ったコンセプトワークの重要性と、それができる人間がいることに、多くの人が気づき始めたからだと思います。ウチも意外なことに、都市開発の案件は結構大きな都心の総合開発なども含め、4~5件手がけています。いろいろやることが多くなっています。今の世の中には、コピーライターができることがたくさんあるんです」

 

そんな小西さんは博報堂出身。入社以来、一貫してコピーライターの道を歩んできた。

 

「でも、入社した時はマーケター志望だったんですよ。世の中を動かしていくのはきっとマーケターだろう、と思っていましたので。ただし博報堂は入社時に筆記試験があり、その結果、人事局長に『マーケターの素養はゼロ。でも、クリエイティブで引っかかってるよ』と言われて…その時の人事局長の顔は忘れませんねぇ(笑)。

 

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もともとクリエイティブで12人を採用する予定だったのですが、僕は13番目で入ったんだそうです。
配属が決まった時、僕を選んでくれたクリエイティブ・ディレクターが『小西君、頑張ってね。クリエティブの12人中13番目だからさ』と、言わなくてもいいことを酔っ払って言うわけです(笑)。もう、どん底からのスタートでした」

 

幸か不幸か、志望していなかったコピーライターになった小西さん。そこからいかにして、今への礎を築いていったのか。次回は小西さんの博報堂勤務時代について、さらに詳しく話を聞いていく。

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プロフィール
小西 利行

小西 利行 こにし としゆき

POOL inc. 代表取締役

1968年京都府出身。大阪大卒業後、1993年博報堂入社。
2006年に現在のPOOL inc.を設立。
CM制作から商品開発、ブランド開発、企業コンサルティング、都市開発までを手がける。これまでに手がけた主な仕事は、日産自動車『モノより思い出』、サントリー『伊右衛門』『ザ・プレミアムモルツ』、『プレイステーション』など。CLIO、ニューヨークADC、ONE SHOW、TCC賞、ACC賞など国内外で受賞歴多数。
クリエイティブディレクションを手がけた越谷市の大型ショッピングセンター「イオンレイクタウン」で、日本初のサステナブルデザインアワードを受賞。東京天王洲などの都市開発も手がける。ENJIN 01 文化戦略会議メンバー。劇作家/絵本作家でもある。

※ 会社、役職、年齢など、記事内容は全て取材時のものです

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